コンサートの場所は、パリの郊外、コロンブという街でした。
気合いの入り過ぎた高橋青年は、随分早く現地に到着してしまい、やる事も無いので取り敢えず会場まで行ってみる事にしました。
開演まではまだ3時間以上あり、会場は静まり返っていました。
「さて、どこで時間を潰そうか」と考えていると、会場の中からかすかに音楽が聞こえて来ました。
「もしかしたらリハーサルをやっているのかも」と思った高橋青年は、誰も居ない入口を通り抜け、恐る恐る会場の中に入ってみました。
二人は階段を降り、ロビーまでやって来ました。
近づくにつれて音はどんどん大きくなりました。
やはりホールの中では、リハーサルをやっているようでした。
高橋青年は、勇気を出してホールの扉を開けてみました。
ホールの中には、たくさんのスタッフが居て、忙しそうに働いていました。
そしてステージの上では、憧れのステファン・グラッペリが演奏していました。
二人はそのまま客席に座り、誰にも気付かれず、かなり長い時間リハーサルを聴いていました。
夢の様な時間でした。
リハーサルが終わりロビーに出てみると、「まだ入場してはいけませんよ!」と係りの人に注意されました。
「すいません!」と逃げるように外に飛び出すと、入口には入場を待つ人の長い行列ができていました。
二人は、今度はチケットを使って入場し、その日二度目のコンサートを楽しみました。
この時のコンサートの模様はCD化されています。(上の写真)
コンサート終了後、二人は楽屋に行ってみる事にしました。
不思議な事に、誰にも止められる事無く、簡単に楽屋に入る事ができました。
するとその時、信じられない事が起こりました。
マルシアックで会ったマネージャーの人が、なんと高橋青年の事を覚えていて、グラッペリに紹介してくれたのです!
グラッペリと再会した高橋青年は、特訓したフランス語で一生懸命話しました。
極度に緊張していましたが、今回は山口あかねが助けてくれたおかげで、少し話をする事ができました。
そして最後に、山口あかねが「私達、来月からパリに住むんです。」と言うと、グラッペリは「パリに来たらいつでも連絡して来なさい。」と言って、高橋青年に名刺をくれたのでした。(感激!!!)
こうして、遂にグラッペリの連絡先を手に入れた高橋青年は、4月の終わり、山口あかねと共にパリでの生活を始めました。
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